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石岡良治の個人ブログ:経歴などはカテゴリ「プロフィール」をご覧下さい


by yishioka
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アニメを通して「少女マンガ」を考える1

ここ数年、にわかながらも少しずつ意識してTVアニメを見るようになりました。
当ブログのカテゴリプロフィールからも明らかですが、
これまで、日本のマンガとアメリカの(古典)カートゥーンについては、研究を意識した関わり方をしていたのにもかかわらず、
日本のアニメとアメリカのコミックスについてはかなり疎かったからです。
……生粋のファンからは怒られそうな理由ですね。
映画についても、かつてドゥルーズ『シネマ』を読みながら対象作品を見たことがあり、ある種の人たちにとっての禁忌?にすでに思いっきり触れてしまっているわけですが(何人かの友人には実際指摘されました)、
しかしながら、この「にわか問題」については思うところもあるので稿を改めたいと思います。

ところで、今期個人的に楽しんでいる作品に、特に白泉社系の「少女マンガ」のテイストを感じるものが多いことに驚いています。
具体的には『とらドラ!』『まりあ†ほりっく』『続 夏目友人帳』あたりです。
そう感じた理由の説明は一通り触れた後で書きます。

アニメ『とらドラ!』は、原作が電撃文庫から出ているライトノベルではありますが、かなり王道の少女マンガ的な展開をしていると思います。
最近、この形容が時に揶揄として使われることも知りましたが、もともと少女マンガで育った(!)私にはそういう意図があろうはずもありません。
21話「どうしたって」で、ついに2話「竜児と大河」以来蓄積されてきた諸々のモチーフが一気に爆発したこともあり、先の話が待ち遠しいです。
(原作は放映後に後追いするようにつとめています。ここしばらく仕事が続いているので6巻止まりですが)
この楽しさは、短編から発展した長編にはよく見られる、ご都合主義スレスレの辻褄合わせが、物語のダイナミズムと一致することで生まれるものだと思います。
というのも、2話は原作の1巻ラストにあたり、かなりハイスピードでシナリオを進めていることがこのアニメの大きな魅力になっているのですが、その感触がちょうど「良質な短編のラスト」に近いからです。
一巻でひととおりの展開を終え、様子をみて続巻の有無が決まるというのは、『涼宮ハルヒの憂鬱』など、ラノベではよく見られるパターンだと思いますが、それはちょうど白泉社系少女マンガにおける連載決定のパターンとも一致しています。

『とらドラ!』はよく少女マンガ的と言われるようです。それは原作者が女性であって、一見するとテンプレ的な「ツンデレ」にみえるヒロイン大河の心理描写や、いかにも少女マンガの男性主人公的な竜児の存在などが、3人ヒロインの男性読者向けの物語でありつつも、そこから逸脱する部分の多さにつながっているからなのでしょう。
アニメというメディアにおいて、こうした特徴は必ずしも利点ではないはずですが、2話ラストの絶妙な心理描写のおかげで、焦点がブレない物語になっているような気がします。この部分は、恋愛物が短編から長編に飛躍できるかどうかの鍵だと思いますが、シリーズ構成も行っている脚本家岡田麿里による素材の取捨選択がすぐれているのではないでしょうか。
長編化に伴い原作では2巻、アニメでは5話で登場するヒロイン亜美の物語が、「遅れてきたこと」ゆえのもどかしさをめぐって繰り広げられるのも絶妙です。アニメでは彼女の描写が強化されており、TVアニメが「連続ドラマserial drama」の構造を持つことを生かしているのではないでしょうか。

原作もアニメもほぼ同時期に最終回を迎えるようなので、とても楽しみにしています。
もし微妙にがっかりする展開だったとしても、2話ラストがあるので大丈夫w
連載物は、最終回で評価が大きく変わってしまうものが多いですが、短編→長編パターンの場合、どこかでちゃんと最終回的なエピソードが成り立っていれば、十分楽しめるのもその利点でしょう。(例えば私にとっては『彼氏彼女の事情』がそれでした。今も一巻だけ持っています)

(2に続きます)
by yishioka | 2009-03-01 00:52 | アニメ